2008/02/02

正しい論文作成のために

欧文書体―その背景と使い方 (新デザインガイド)
小林 章
美術出版社 (2005/06)
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この本は読むたびに発見があります.というよりむしろ,間違った使い方をしていて恥ずかしく思う,といったほうが正確でしょうか.今日パラパラ眺めていて,ハイフンとダーシの使い分けをまったくおざなりにしていたなと気づきました.

僕の書きものは TeX の機能でだいたいの処理が片付いてします.そのせいか,TeX が読み取れない文法的,論理的な用法の違いのところまで全部 TeX がやってくれるという錯覚を覚えてしまうんですね.書き手による明示的な区別が必要とされるのに,勉強してないからできない.

情報科学の発展のおかげで,組版はもはや特別なものではなくなってしまいました.誰もが,見栄えのよい文書を発信できる環境をもっているといっていいでしょう.この流れは情報発信の裾野を爆発的に広げることになったと思います.一方で,組版ソフトの進歩とともに,原稿を作成する人間と組版を行う人間との間に垣根がなくなってきたという一面もあります.このため,ものを書く人間が意識すべきポイントは拡大したように思えます.たしかに,ハイフネーションの使い方を知っていても褒められることはありません.でも,知らないと恥をかく.恥をかくくらいならまだしも,「こいつはこんなことも知らないのか」と読んでくれないかもしれない.そんなことはないと思われるかもしれませんが,異性でも論文でも第一印象は非常に重要です(もちろん中身はもっと重要です).


この本は,欧文書体のデザインに関する書籍です.文章の見せ方には,慣習という名の厳格なルールがあります.このルールに従わないと,いかに適切に情報を伝えていても,遠目に見ていかに美しくても,文書としては失格です.そのため,この本は文字の使い方にも言及しています.それは,ものを書く人間として恥をかかない程度の組版ルール(予想です.僕は組版の全貌を知らない)にも通じるところがあります.たとえ原稿を書くだけが仕事だとしても,どこでスペースを入れて,どこで入れないか,いつシングルクオーテーションで,いつダブルクオーテーションか,イタリック体はどのように使うのか.知っておくべき情報はたくさんあるのです.ぜひとも手にとって学んでいただきたい.

もちろん,組版のルールだけを学ぶのであれば,「欧文書体」には余計な情報が多すぎるかもしれません.

文字のなりたちから,組版の基本,フォントの選び方,使い方,さらにはデザインの仕方まで,この本で語られる内容は多岐に渡ります.文字を扱う際の情報を総合的に取り込まれています.そのうちどの一つをとっても,小林章氏の文字への愛情を感じます.ほんとうに素晴らしい内容だと思います.




僕は半年前にこの本と出会い,文字の素晴らしさを知りました.そして,Linotype の Zapfino シリーズのフォントを買いました.高かったですが,Windows ユーザーなので仕方がありません.

まあ,余談ですが...

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