小川さんによる連作小説
文章の響きが抜群に美しい
僕が好きなのはここ:
『弟がこうむった痛みに見合うだけのものを私も背負う必要があった。もはや悲しむことは、私の身体の一部だった。
「お土産のホットケーキ。弟の好物なんです。ちゃんとメープルシロップも添えてね」
彼女は膝の上に載せた紙袋を撫でた。甘い匂いが漏れてきた。』(角川文庫版、p56)
主人公の『私』は弟を失い、文章がかけなくなってしまう。失意の底で喘いでいるさなか、交通事故に遭う。『私』がリハビリセンターに向かう電車内、弟が入院しているという女性と出会い、親しくなる。「彼女」の弟の話を聞くにつれ、自分の中に言葉が帰ってくるのを感じる。
なんでもないこういう情景の描写がとても美しいなぁって感じます。「彼女」が弟のことを想いながらホットケーキを焼いて(たぶん)、そのホットケーキが弟自身であるかのように愛おしく撫ぜる。その想いとともにホットケーキとメープルシロップの匂いが立ち込める。紙袋を撫でたくらいで匂いが立つとはあんまり思えないんだけど、弟を想うお姉さんの愛情がたっぷり感じられますね。
この後、そのお姉さんに関してちょっと悲しい結末が待っているのですが、それは読んでのお楽しみ。
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