Student's Introduction To English Grammar
posted with amazlet on 08.03.22
Rodney Huddleston
Cambridge University Press (2005/03/14)
売り上げランキング: 15038
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mixi 日記をご覧頂いている方にとっては重複する記事になって申し訳ないですが,この本はどうしてもお勧めしたいので(多くの方にとって必要ないであろう専門書ですが),あえてこちらでも掲載したいと思います.
第2外国語として英語を学び始めて,はや15年.留学経験のない僕にとっては,文法書というのは外国文化を知る一つの手段でした.中には読んでいて面白いものもありましたが,やや専門的な本にしろ,馴染みやすいハウツー本にしろ,少なからず不満がありました.一番の問題点は何か.それは,記述が「天下り的」すぎるということ.文法的である文章と,文法的でない文章の間にある微妙な「揺れ」を無視して,白黒はっきりつけるというのは,人間の扱う言葉の生き生きとした変化を殺してしまうことにもなりかねない危険な行為です.従来の文法学者はその危険を冒してきた.なぜなら,彼らは文法学者だから.文法が完全無欠であるべきだと思っているから.
しかし,文法は数学や自然科学とは違う.旧態依然とした文法書の著者とは対照的に,上記の本の著者ははっきりとこう述べる.これは,まさに僕が思い続けていたことだ.
“What we're saying is that when there is a conflict between a proposed rule of grammar and the stable usage of millions of experienced speakers who say what they mean and mean what they say, it's got to be the proposed rule that's wrong, not the usage.”(我々が申し上げているのは,提起された文法事項が,自分の考えを正確に表現できる優れた話し手の言葉づかいと食い違うとすれば,訂正を迫られているのは文法であって,言葉づかいではない,ということである)
日本の「ら抜き言葉」にせよ,敬語の乱れ(たとえば,「おビール」や「1,000円からお預かりします」)にせよ,誰もが違和感なく使うくらいに定着すればそれを「文法的」と英断することが文法学者の仕事であるはずだ(だから幸いなことに文法学者の失業は原理的にありえない.それは,時として非常に危険の伴う作業であろう.だからこそ,文法学者が学者を名乗れるのだろうとも思う).
この本の著者らはその大仕事をやってのけた.きっと,これから10年で英文法は大きく変わる.もちろん,「この本が完全である」と主張している訳ではありません.だって,生きた文法に完全はありえないのですから.不完全性を許容したところが,この文法書の卓越した点です.
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