それでもあえてこの本を手に取ったのは本屋で平積みにされていたからではない(実際はそうなんだけれども,読んでしまったらそうじゃなかったような気がする).僕は心の底から村上春樹を求めている.彼の小説を,彼の言葉を,彼の生き様を.もちろん陳腐な尊敬や同一化などではない.さらに未熟な読者として,ひとりの他人として,村上春樹の言葉に感心してしまう.村上春樹の筆跡には,あらゆる退屈をエンターテインメントに変容させる魔力があり,あらゆる日常から哲学を探り出す引力があるんじゃなかろうか.そんなこんなで,この本を読んだ.
「走ることについて語るときに僕の語ること」は,村上春樹の小説家としての人生と並行する,ランナーとしての人生についての語りである.ここに描かれているのは,「走る」という行為そのものについてではなく,「走る」という行為から得られたあらゆるものから何を思い,何を学んだか,大げさにしてしまうと人生哲学とでもいえるべき何かである(と僕は思う).多くの人にとってこの本は無意味な経験談かもしれない.でも,同じくらい多くの読者にとっては村上春樹の生き様に感動し,個々人に固有の何かに向かって邁進するきっかけを与える手引き書になるかもしれない.ごく中立な立場でいえば,そんな説明になるのだろうか.
ごく個人的な立場でいえば,一言.面白かった.それ以上の何が必要ですか?
走ることについて語るときに僕の語ること
posted with amazlet on 08.01.29
村上 春樹
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