久々の小説.乳と卵を読んでこの人の本は二度と読むまいと思っていたんだけれど,平積みされているとつい手にとってしまいました.印象はがらりと変わりこちらは直球な小説のように思います.いじめがテーマです.
クラスでいじめにあうコジマと「僕」の間で生まれた密約.その残酷な「しるし」にしっかりとつかまっていることでようやく均衡を保っていたの密かな友情は,ある日簡単に崩れ落ちてしまう.受け入れることで闘うか,立ち向かうことで闘うか.
ニュースでいじめ関連の話題をみていると,いじめの現場には救いがないようにも思えてしまって悲しくなるばかりだけれど,もし救いというものが本当にあるとすれば,それが必要な人に正しく行き渡るような世界にできればいいですね.
辛らつな表現が多くあります.何割かの人には「痛い」小説でしょう.何割かの人には「いじめの現実がわかっていない」小説かもしれません.この小説はそれでもなお素晴らしい小説です.重いテーマを選ぶことの責任感が伝わってくるような気がします.残酷で,中途半端で,切なくて,救いに満ちていて,美しい.
不幸にも,川上未映子さんの独特な文体を嫌いになってしまった方もぜひ読んでみてください.
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