2008/02/06

村上春樹 「東京奇譚集」 (新潮文庫)

深夜,シングルモルトを舐めながら村上春樹を読む.穏やかなハイランドモルトとゆったりと流れる時間.やめられまへんな.今宵のおともは,DALWHINNIE 15 Year Old


東京奇譚集 (新潮文庫 む 5-26)
村上 春樹
新潮社 (2007/11)
売り上げランキング: 636


短編集について何か書くのはいつも苦手だ.それぞれの作品に思惑があり,しかしそれでいて共通する価値観が根底に流れている.短編集を読み,パソコンの画面に向かうと無力感にさいなまれる.その水脈を見つけ出すほどに僕の読解力が鍛え上げられていない.

さて,この本の何について書けばいいだろうか.本当にわからない.どの作品も,現実離れした設定の中で巧みに村上哲学を crystalize しているという意味で,村上春樹の良さが表れている.しかし,それは表層的なもので,ほとんどすべての作品に当てはまると言えるかもしれない.情報としてあまりにも不十分だ.

というわけで,気に入った一節を引用しよう.

『職業というのは本来は愛の行為であるべきなんだ。便宜的な結婚みたいなものじゃなくて』

「日々移動する腎臓のかたちをした石」の中で,淳平がキリエに語った言葉.キリエの職業に関する思いと,彼の思いが重なり,ふたりの関係を縮めるきっかけになった.

矛盾したように見える表現の中に,世の中への皮肉が見えておもしろい.こういう言葉の選び方が僕はとても好きだ.つくづく自分は皮肉屋だなと感じて,すこし胸が痛い.

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